【生成AI活用のリアル】AIを全社導入するために実践した3つの工夫

こんにちは！デザイナーの桐田です！

この度、アップルップルはアドビ社のPR企画「みんなのAI活用」に参加させていただくことになりました。
そこで今回、アップルップルがどのように生成AIと向き合っているかをご紹介します。
実はアップルップルは生成AIを積極的に導入している企業で、現在、社員全員がAIを使いこなしています。

しかし多くの経営者の方に話を聞くと、「AIをうまく活用できていない」「全社で導入するためのハードルが高い」と悩んでいる方が多いようです。
その理由として、そもそも生成AI活用の知見が少ない、セキュリティが心配、といった意見も多く聞きます。

そこで本記事では、当社がなぜ生成AIをスムーズに導入できているのか？その裏側についてご紹介します。
当社がAIを導入するために工夫していること、そして現場のデザイナーが実務でどのようにAIを活用しているかの具体的な事例を取り上げますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

• 1. AIを全社導入するために意識したこと
  • 【その1】AIツールを各人がすぐに導入できるよう、決裁権を渡した
  • 【その2】実務の中でAIツールを積極的に使うルールにした
  • 【その3】AIツールの活用法について、社内で気軽に共有し合う機会を増やした
• 2. アップルップルのデザインの現場での活用事例
  • 生成AIを使って、チュートリアル用の画像を作成する
  • 手順1：画像生成AIツールで元となる画像を生成する
  • 手順2：Adobe Photoshopで画像を編集する
  • 業務効率への貢献度
• 3. アップルップルのコンテンツマーケティングの現場での活用事例
  • Acrobat AIアシスタントを用いて、データレポートの分析を効率化する
    • 【メリット１】Googleドライブ内のPDFを開けば、AIアシスタントがすぐに起動する
    • 【メリット2】膨大な数字情報から「傾向」などを瞬時に言語化
    • 【メリット3】専門用語をわかりやすい言葉に「翻訳」してくれる
    • 【メリット4】資料内の引用リンクが表示されるため、ハルシネーションのリスクがなく安心
    • まだある！Acrobat AI アシスタントが業務に強い理由
　
• 4.AIを活用する上で心がけていること
• 5.まとめ

1. AIを全社導入するために意識したこと

それでは早速、当社がAIを全社導入するために意識したことを紹介していきます。
全社導入は、以下の3つのポイントを意識して進めました。

• 【その1】AIツールを各人がすぐに導入できるよう、決裁権を渡した
• 【その2】実務の中でAIツールを積極的に使うルールにした
• 【その3】AIツールの活用法について、社内で気軽に共有し合う機会を増やした

それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう！

【その1】AIツールを各人がすぐに導入できるよう、決裁権を渡した

まず、社員がAIを気軽に体験できる環境を整備することが重要です。
AIツールは、使ってみなければその便利さが分かりません。試行錯誤を通じて最適なツールを見つけるための土台作りとなります。

当社では、AIツールをすぐに試せるよう、以下の2つの仕組みを導入しています。

仕組み1：利用料を即時決済できる

社員全員にfreeeカードを支給し、業務で使うAIツールの利用料を、各自の判断で決済して良いとしています。
稟議を上げて決済を待つ時間がないため、試したいツールを思い立ったその場で導入・検証できます。

仕組み2：使用ツールの縛りを設けない

特定のAIツールに限定せず、好きなものを使ってOKとしています。
社員一人ひとりが業務効率が上がると感じるツールを自由に選べるため、幅広いAIツールの知見が社内に蓄積されます。

【その2】実務の中でAIツールを積極的に使うルールにした

試用環境を整えたら、次に重要なのは「実務への組み込む」ことです。
ただ試すだけでなく、日常業務の一部として活用することで、AIが「特別なもの」から「当たり前のツール」へと変わっていきます。

PhotoshopのAIを活用した画像編集

a-blog cms の学習コンテンツや公式テーマの画像の一部は、画像生成AIツールで生成し、Adobe PhotoshopのAIで編集したものを使用しています。これにより、フリー素材を探す手間を削減できるだけでなく、独立性が確保されたオリジナリティの高い素材を短時間で作成可能になりました。

Chat-GPTやGeminiを活用した文章の作成・添削

Webサイトのデザインカンプ作成時などに、「キャッチコピーのアイデア出し」や「ダミーテキストの作成」に活用することで、「それっぽい」文章を一から考える手間を省き、デザイン作業に集中できるようになりました。
また、社内ブログや公式のお知らせのドラフト作成後、AIを校正・添削ツールとして活用。表現のブラッシュアップや誤字脱字のチェックをAIに任せることで、「確認作業」の精度と速度を向上させました。

【その3】AIツールの活用法について、社内で気軽に共有し合う機会を増やした

最後に、「情報共有」の仕組みです。
AIの活用法は日々変化するため、社内での活発な情報交換が、活用レベルを底上げする鍵となります。

社内コミュニケーションツールであるSlackに、AI活用専用のチャンネルを設けています。
このチャンネルでは、「このプロンプトでこんな画像ができた」といった、プロンプト（指示文）とその結果（画像や文章）をセットで共有しています。

これにより、「AI活用ノウハウ」が属人化せず、組織全体の資産として蓄積されます。他の社員がすぐに真似て試すことができ、活用がさらに促進される環境を作っています。

2. アップルップルのデザインの現場での活用事例

生成AIを使って、チュートリアル用の画像を作成する

a-blog cms 公式の学習コンテンツ「チュートリアル」が2025年にリニューアルされた際、その中に登場するサンプルサイトの画像すべてに、生成AIを活用しました。
今回はこのチュートリアルの事例を元に、AIを使った画像制作フローを解説していきます。

手順1：画像生成AIツールで元となる画像を生成する

はじめに画像生成AIツールを使用して、テーマに合った元となる画像を生成します。

手順2：Adobe Photoshopで画像を編集する

元の画像ができたら、それをPhotoshopで修正していきます。ここではPsのAI機能の「生成塗りつぶし」と「削除ツール」を使った修正方法と使い分けをご紹介します。

細部の修正（生成塗りつぶし/プロンプトあり）
画像生成AIの課題として、人物の指や表情など、細部の描写が不自然になることがあります。

手順：
左ツールバーの「なげなわツール」など、自由に選択できるツールを選びます。不自然になっている男性の左手部分を、修正したい範囲を少し広めに、囲みます。
選択範囲を作成すると、画面下または選択範囲の近くに「コンテキストタスクバー」が表示されます。
コンテキストタスクバーにある「生成塗りつぶし」ボタンをクリックします。
入力欄に、修正したい内容を具体的に日本語で入力します。今回は「男性の広げた左手」と入力し、「生成」ボタンをクリックします。

ポイント：
PhotoshopのAIは日本語のプロンプトにも対応しており、「男性の広げた左手」のような簡単な指示でも、適切な修正を提案してくれます。

細かい部分を手早く消去（削除ツール）
画像内の狭い範囲の不要物を素早く、直感的に消去・修正します。

手順：
ツールバーから「削除ツール」を選択します。
ブラシサイズを調整し、ゴミ箱のオブジェクトの上をなぞるだけで、AIが周囲の情報を元に自然に消してくれます。

ポイント：
削除ツールは、「手早く、直感的に、細かい部分を消す」ことに特化しています。今回の例のように、画像のごく一部に存在する不要物をササッと消したい場合に最適です。

背景の広範囲な置き換え・単純化（生成塗りつぶし/プロンプトなし）
雑誌の表紙のようにテキストを重ねたい場合など、既存の背景が複雑すぎるとテキストが読みにくくなることがあります。ここでは、背景の余分なオブジェクトをまとめて削除してシンプルにします。

手順：
長方形選択ツールなどを使用して、背景部分を大まかに選択します。
選択範囲が背景全体をカバーしていることを確認したら、「生成塗りつぶし」ボタンをクリックします。
今回は、「シンプルな背景」にしたいので、プロンプトは何も入力せず、空欄のままにして、「生成」ボタンをクリックします。
背景がシンプルなものになったら、最後にタイトルやコピーを入力して完成です。

ポイント：
プロンプトを空欄にすると、AIは「選択範囲内のコンテンツを違和感なく消す/置き換える」処理をしてくれます。今回は、背景を広範囲で置き換えるため、これにより被写体だけが残り、背景が消去されたような状態になります。

業務効率への貢献度

従来、フリー素材の利用においては「検索・選定」「ライセンス確認」「色調・構図の調整」といった一連の作業が、デザイナーにとって大きな業務負荷となっていました。
今回、画像生成AIを活用した結果、プロンプトの設計から生成、加工、書き出しに至るまで、計7枚の画像を約3.5時間で完成させることができました。
従来のフローと比較して作業スピードが向上しただけでなく、イメージに合致する素材が見つからないという心理的な負担も軽減されたと感じています。

3. アップルップルのコンテンツマーケティングの現場での活用事例

Acrobat AIアシスタントを用いて、データレポートの分析を効率化する

当社ではGA4レポートを自動作成してくれるサービス「FARO REPORT NEXT」を契約し、「appleple」「ベースキャンプ名古屋」「a-blog cms」の3サイトのデータを毎月分析しています。非常に詳細なレポートが生成されるため、1サイトあたりの分量は40ページ以上にもなります。ここには、サイトのアクセス推移（月別・日別）、ユーザー属性、流入経路、そしてコンバージョン（キーイベント）の状況など、GA4の主要指標が網羅されています。詳細な分析には適していますが、多忙な業務の合間に「要点だけサッと確認したい」という時には、その情報量が逆にハードルとなっていました。

▼実際のFAROレポート（一部抜粋）

そこで今回は、この40ページ超のレポート（a-blog cms ブランドサイト版）をAdobe Acrobat AIアシスタントに読み込ませ、「分析」から「社内共有」まで「Acrobat AIアシスタント」を使ってみました。

▼リンクURL
https://www.adobe.com/jp/acrobat/generative-ai-pdf.html

まずは、実際に行った分析フローをご紹介します。

【実際の分析フロー】

1. レポートを開き、AIアシスタントを起動。
まずはGoogleドライブに保存されたレポート（PDF）を開きます。

2. AIアシスタントを起動し、知りたいことを投げる
右上のアイコンをクリックしてAIアシスタントを起動します。チャット欄から「何を知りたいか」を問いかけるだけで分析がスタートします。

3. 得られた知見をチームへ展開
AIが導き出した回答は、コピーして社内のチャットツールなどで共有します。

実際にこの流れで分析を行ってみて感じたAcrobat AI アシスタントの具体的なメリットを、以下にご紹介します。

【メリット１】Googleドライブ内のPDFを開けば、AIアシスタントがすぐに起動する

個人的に一番感動しているのが「アクセスの良さ」です。私たちはレポートをGoogleドライブで管理しているのですが、拡張機能を入れておけば、PDFをダブルクリックするだけでAdobe Acrobat が起動します。
他のAIツールのように「一度PCにダウンロードして、またAIにアップロードして…」という作業がいりません。この「とにかく手軽」という点が、無理なく使い続けられそうだと感じました。

▼使用している拡張機能はこちら
https://chromewebstore.google.com/detail/adobe-acrobat-pdf-edit-co/efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj

【メリット2】膨大な数字情報から「傾向」などを瞬時に言語化

AIアシスタントは「ページ移動の手間」と「脳内で数値を記憶して比較するコスト」を大幅に削減してくれます。

FARO REPORTは非常に詳細でグラフも見やすいのですが、40ページ以上あると、必要な情報を探すのは、地味にストレスです。
人が探す場合、「目次を見る → ページ数を覚える → スクロールバーをドラッグする 」という動作がありますが、AI アシスタントなら「キーイベントの推移を教えて」とチャットに打つだけです。

おすすめのプロンプト活用法

単にデータを読み取るだけでなく、自分の状況に合わせて「注文」をつけることで、Acrobat AI アシスタントの真価が発揮されます。

1. 複雑な条件も「会話」で解決
例えば当社では、データ不備の関係で「2025年3月以降」に絞って分析する必要があります。こうした前提条件も、言葉で伝えるだけで柔軟に対応してくれます。

▼プロンプト例
「2025年3月以降について、以下の分析をお願いします。
・キーイベント数やキーイベントレートの推移
・ユーザーの流入元
・流⼊経路の変化や増減
・ランディングページ」

AIは即座にレポート全体を読み解き、上記のような回答を返してくれました。
「2. ユーザーの流入元」や「3. 流入経路の変化や増減」「4. ランディングページ」などの項目については、テキストで要点がまとめられており非常に分かりやすいです。
ただ、「1. キーイベント数」のような「数値の推移」に関しては、テキストの羅列だと少し直感的に把握しづらいと感じました。

そんな時は、続けてこう指示を出します。

2. 「表形式」で見やすく整理
数値の比較には「表」が最適です。ここでのポイントは、単に表にするだけでなく「要因」もセットにすることです。

▼プロンプト例
「2025年3月以降の『キーイベント数』と『キーイベントレート』の推移を、月ごとの表形式でまとめて。 カラム（列）には『主な増減要因』も追加して、数字の背景も一目でわかるようにして。」

すると、AIは情報を再構築し、見やすいテーブル形式で出力してくれました。 月ごとの数値の変化と、その背景にある「要因（広告が増えた、検索が伸びた等）」がセットで可視化されるため、とてもわかりやすくなります。

【メリット3】専門用語をわかりやすい言葉に「翻訳」してくれる

当社では、毎月の初めに全社員で「先月の分析結果」を共有しています。これは、職種に関わらず現状の成果や課題を把握し、「データに基づいた判断」ができる組織にするための取り組みです。

しかし、GA4のレポートは専門用語の塊です。「キーイベント」や「Organic search」といった言葉は、専門職以外のスタッフには馴染みが薄く、理解のハードルになっていました。これまでは私が噛み砕いた言葉に書き換えて共有していましたが、その翻訳作業も一苦労でした。
そこで役立っているのが、AIアシスタントの「翻訳」と「要約」のスキルです。
分析が終わったあと、そのままAIに次のようなプロンプトで依頼します。

▼プロンプト例
「この分析結果を社内で共有したいです。 専門用語を使わず、初心者にもわかる言葉で要点をまとめた共有用メッセージを作成して」

「キーイベント」を「重要な行動」、「Organic Search」を「検索エンジン」といったわかりやすい言葉に変換しています。また、単に変換するだけでなく、「（例: お問い合わせやクリックなど）」や「（Googleなど）」といった補足を付け加えています。
さらに、「行動が増えると、サイトの利用が活発になっていることを示します」のように、その数字が良いことなのか悪いことなのか、データの意味まで言語化してくれています。
このように、数字の羅列ではなく「誰にでも伝わるメッセージ」として出力してくれるため、私は内容をサッと確認してチャットツールに貼り付けるだけ。 分析から共有までのスピードが劇的に上がりました。

【メリット4】資料内の引用リンクが表示されるため、ハルシネーションのリスクがなく安心

生成AIを使う上で懸念されるのが、もっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」です。数字を扱う分析業務において、嘘は致命的です。
Acrobat AI アシスタントが業務で信頼できる最大の理由は、回答の生成を「そのドキュメント内の情報のみ」に厳密に限定している点です。外部の不確かな情報や学習データからの推測を混ぜないため、高い精度が保たれます。

さらに、回答の元となった情報ソース（引用元）が明示されるのも大きな特徴です。AIの回答文についた注釈マークをクリックすると、左側に表示された「レポートの原文」の該当箇所へ瞬時にジャンプします。

「ドキュメント内だけを参照している」という安全性に加え、その根拠を目視ですぐに確認できるスプリットビューの仕様が、業務レベルでの信頼性を強固にしています。

まだある！Acrobat AI アシスタントが業務に強い理由

今回は「分析」や「翻訳」を中心に活用しましたが、Acrobat AI アシスタントには、他にもビジネス導入を後押しする機能が備わっていますので、合わせてご紹介します。

1. 安心のセキュリティ
アドビのセキュリティ基準に準拠しており、アップロードした文書や会話データが外部の学習データとして利用されることはありません。機密文書でも安心して扱えます。

2. PDFごとの履歴管理
会話の履歴は「そのPDFファイル」とセットで保存されます。次回ファイルを開いた際に、前回の続きから即座に作業を再開できるため、プロジェクトごとの情報整理が容易になります。

3. 複数PDF横断機能
単一のファイルだけでなく、複数のPDFを同時に読み込ませて、それらを横断して分析させることも可能です。

4. 多様なファイル形式への対応
PDFだけでなく、Word、PowerPoint、テキストファイルなども、Acrobat上で読み込ませれば自動的に変換して処理してくれます。

4. AIを活用する上で心がけていること

全社導入を成功させるために最も意識したのは、「AIに完璧を求めない」という共通認識を作ることです。

導入初期は「AIならすぐに正解を出してくれるはず」と期待しすぎてしまい、思い通りにいかずに利用を止めてしまうケースが少なくありません。そこで私たちは、「AIの役割は『8割のたたき台』を作ること」と定義しています。

「残り2割の仕上げと確認は人間がやるもの」と割り切ることで、現場の心理的なハードルが下がり、誰もが気軽にAIを使い始められるようになります。これから導入を考えている方は、まずこの「完璧を求めないルール」を浸透させることから始めてみてはいかがでしょうか。

5. まとめ

本記事では、当社が実際にAIを導入するために意識したこと、そして現場のデザイナーが実務でどのようにAIを活用しているかを紹介してきました。
AIは仕事を奪うものではなく、もっと大事なことに時間を割けるようにしてくれる便利な道具です。

特に今回ご紹介した「Acrobat AIアシスタント」は、既存のPDF業務をそのまま効率化できるため、最初の一歩として非常に適しています。
興味を持たれた方は、公式サイトや詳しいガイド記事をチェックしてみてください。
また、無料でお試しもできますので（回数制限あり）、ぜひ体験してみてください！

▼公式サイト
https://www.adobe.com/jp/acrobat/generative-ai-pdf.html
▼完全ガイドページ
https://www.adobe.com/jp/acrobat/roc/blog/ai-chat-pdf-guide.html